フリーランスとして事業所得を得ている方は、青色申告・白色申告のどちらでも、原則として記帳と帳簿書類の保存が必要です。会社員の副業も、事業所得に当たるなら同様です。一方、副業が「業務に係る雑所得」に当たる場合は、事業所得とは法令上の記帳・保存の範囲が異なります。
大切なのは、「フリーランス」「副業」という呼び方や売上額だけで決めないことです。所得区分、取引の実態、前年以前の収入、申告方法などを確認する必要があります。この記事では、国税庁の案内をもとに、誰が帳簿を作る必要があるのか、最低限何を記録・保存すればよいのかを分かりやすく解説します。
帳簿作成を外部へ依頼できる範囲から知りたい方は、先に「個人事業主の記帳代行とは」をご確認ください。
結論|記帳・保存の義務は所得区分や条件で変わる
| 働き方・所得区分 | 記帳・保存の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| フリーランスの事業所得 | 記帳と帳簿書類の保存が必要 | 青色申告だけでなく白色申告も対象 |
| 副業の事業所得 | 記帳と帳簿書類の保存が必要 | 会社員かどうかではなく所得区分で判断 |
| 業務に係る雑所得 | 収入・経費を計算できる記録を残す。前々年の収入金額が300万円を超える場合は、現金預金取引等関係書類の保存が必要 | 法定の帳簿作成義務は事業所得と異なり、300万円は所得ではなく収入金額 |
| 給与として受け取る副業 | 勤務先から交付される源泉徴収票などを保存 | 業務委託の報酬とは所得区分が異なる |
この表は一般的な整理です。事業所得と雑所得の区分は、開業届の有無や一つの金額だけでは決まりません。国税庁の「所得税基本通達35-2」では、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行われているかで判定するとされています。迷う場合は、税務署または税理士へ確認してください。
フリーランスは白色申告でも帳簿作成が必要
国税庁の「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」では、事業所得、不動産所得または山林所得を生ずべき業務を行う全ての方が対象と案内されています。所得税の確定申告が必要ない方も対象です。
「青色申告は帳簿が必要だが、白色申告なら不要」という理解は正しくありません。白色申告でも、売上や経費について、取引年月日、相手方、金額などを記録し、帳簿と請求書・領収書などを保存します。一定の取引は日々の合計額で記載できるなど、簡易な方法も認められています。
開業届を出していないことだけで、記帳・保存が不要になるわけでもありません。実際に事業所得を生ずべき業務を行っているかどうかで考えます。青色申告の控除要件や今後の制度変更は「令和9年分から変わる青色申告特別控除」も参考にしてください。
副業は「事業所得」か「雑所得」かを確認する
会社員が本業以外で得る収入は、すべて同じ扱いになるわけではありません。雇用契約に基づくアルバイトなら給与所得、業務委託の報酬などは、実態に応じて事業所得または業務に係る雑所得となる可能性があります。
国税庁の「No.1500 雑所得」では、原稿料やシェアリング・エコノミーなど、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものが「業務に係る雑所得」の例として案内されています。ただし、事業所得に当たるものは除かれます。
前々年の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合
令和4年分以後、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、その業務に関する請求書・領収書などのうち、現金や預貯金の入出金に関係する書類を5年間保存する必要があります。
判定に使うのは、経費を差し引いた所得ではなく収入金額です。また、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超え、確定申告書を提出する場合は、収支内訳書など、総収入金額と必要経費の内容を記載した書類の添付が必要です。
前々年の収入金額が300万円以下でも、所得計算や税務署への説明に備え、収入・経費の記録と根拠資料を整理しておくことが大切です。帳簿書類の保存状況は、事業所得か雑所得かを判断する際の材料の一つにもなります。
「副業所得20万円以下なら何も記録しなくてよい」は誤解
よく聞く「20万円ルール」は、一定の給与所得者について、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下なら、原則として所得税の確定申告を要しないという制度です。売上が20万円以下という意味ではありません。
所得金額を確認するには、収入と必要経費を集計する必要があります。そのため、確定申告が不要かを判断するためにも記録は必要です。また、医療費控除などのために確定申告をする場合は、20万円以下の副業所得も併せて申告します。詳しくは国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」をご確認ください。
副業が別の勤務先から受け取る給与の場合は、給与収入が2,000万円以下で、給与の全部が源泉徴収の対象であるなど一定の条件の下、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得金額との合計が20万円を超えるかで判定します。業務委託の副業とは判定方法が異なります。
さらに、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。お住まいの自治体の案内も確認してください。「申告不要」と「記録不要」は別の話です。
最低限、帳簿へ記録しておきたい内容
- 売上・報酬:取引日、取引先、内容、請求額、入金日、源泉徴収額
- 仕入れ・経費:支払日、支払先、内容、金額、支払方法
- 未入金・未払い:年末時点の売掛金、買掛金、クレジットカードの未払分
- 現金・預金:事業に関係する入出金と帳簿残高
- 固定資産:パソコン、機材、車両などの取得日、金額、利用状況
- 事業と私用の区分:自宅の家賃、通信費などを事業と私用の両方で使う場合の根拠
帳簿だけでなく、請求書、領収書、契約書、納品書、通帳、カード明細なども整理します。必要資料を漏れなく集めたい方は「記帳代行に必要な資料一覧」をご覧ください。
帳簿・請求書・領収書は何年保存する?
| 区分 | 主な保存対象 | 保存期間の目安 |
|---|---|---|
| 青色申告 | 仕訳帳、総勘定元帳、決算関係書類、領収書、請求書など | 書類の種類により原則5年または7年 |
| 白色申告 | 法定帳簿、任意帳簿、決算書類、請求書、領収書など | 法定帳簿は7年、その他は原則5年 |
| 前々年の収入金額が300万円を超える業務に係る雑所得 | 現金預金取引等関係書類 | 5年 |
実際の保存期間は、所得区分、書類の種類、消費税の課税事業者かどうかなどで変わります。国税庁の「記帳や帳簿等保存・青色申告」で対象書類を確認し、保存期間を確認できない書類は安易に処分しないようにしましょう。
メールやクラウドで受け取った請求書はデータで保存
税法上保存が必要な請求書や領収書などを、メール添付のPDF、クラウドサービス、インターネット通販などを通じて電子的にやり取りした場合、保存義務者は一定の要件を満たして電子データのまま保存する必要があります。紙へ印刷しただけで終わらせず、日付・取引先・金額などで確認できるよう整理しましょう。国税庁の「電子帳簿等保存制度のパンフレット」で最新の保存方法を確認できます。
帳簿作成を続ける3つの方法
1.表計算ソフトで記録する
取引が少なく内容も単純なら、日付、取引先、内容、収入、経費、支払方法を一覧にして記録する方法があります。入力ルールを途中で変えず、領収書や請求書と対応できる番号を付けると確認しやすくなります。
2.会計ソフトを利用する
銀行口座やクレジットカードを連携すると入力負担を減らせます。ただし、自動提案された勘定科目や事業・私用の区分が必ず正しいとは限りません。連携後も未処理取引、二重計上、残高を確認します。
3.記帳代行へ依頼する
資料はそろっているものの、入力時間が取れない、数か月分がたまっている、会計ソフトの操作を負担に感じる場合は、記帳代行を検討できます。オンラインでの資料提出や確認事項は「オンライン記帳代行の仕組みと選び方」をご確認ください。
すでに1年分が未処理でも、資料の所在と対象期間を確認すれば整理を始められます。「1年分たまった記帳を依頼する方法」で準備手順を解説しています。
記帳代行と税理士、どちらへ相談する?
| 困っていること | 主な相談先 |
|---|---|
| 領収書や明細を帳簿へ入力したい | 記帳代行 |
| 経費にできるか個別に判断してほしい | 税理士 |
| 所得区分について相談したい | 税務署または税理士 |
| 申告書を作成・提出してほしい | 税理士 |
| 帳簿作成から申告まで外部支援がほしい | 記帳担当と税理士の連携範囲を確認 |
税理士等でない記帳代行業者は、個別の税務相談、税務書類の作成、申告代理を行えません。申告まで依頼する場合は、税理士等の担当範囲と記帳担当者との連携方法を確認しましょう。税理士が必要なタイミングは「個人事業主に税理士は必要?」、帳簿から申告まで依頼する流れは「確定申告を丸投げする方法」で確認できます。
フリーランス・副業の帳簿についてよくある質問
売上が少なくても帳簿は必要ですか?
事業所得を生ずべき業務を行っている場合は、売上が少なくても記帳・保存制度の対象です。業務に係る雑所得の場合も、所得計算と取引の根拠を示せるよう記録を残しましょう。
赤字なら帳簿を作らなくてもよいですか?
赤字で所得税の申告が不要になる場合でも、事業所得を生ずべき業務を行っている方は記帳・保存制度の対象です。赤字額を把握し、青色申告で純損失の繰越控除などを検討するためにも、収入と経費の記録が必要です。
領収書を保管するだけでは足りませんか?
領収書だけでは、売上、未入金、取引の目的、事業と私用の区分などを把握できません。事業所得を生ずべき業務では、帳簿へ取引内容を記録し、証拠書類と対応させて保存します。業務に係る雑所得でも、所得計算の根拠を確認できるよう記録と資料を整理しましょう。
副業の会社員も毎月記帳した方がよいですか?
取引が少なくても、月ごとに売上、経費、入金状況を確認すると、年末の漏れや資料紛失を防ぎやすくなります。少なくとも年末まで放置せず、定期的に整理することをおすすめします。
20万円以下なら住民税も申告不要ですか?
20万円以下で所得税の確定申告が不要となる場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。所得や控除の状況でも変わるため、お住まいの市区町村へ確認してください。
まとめ|申告直前ではなく日頃から記録する
フリーランスや副業でも帳簿作成が必要かどうかは、働き方の呼び名ではなく所得区分、取引実態、前々年の収入金額などを確認して判断します。事業所得なら、青色申告・白色申告のどちらでも記帳と帳簿書類の保存が必要です。業務に係る雑所得も、前々年の収入金額が300万円を超える場合には一定書類の保存義務があります。
副業所得が20万円以下でも、確定申告の要否と所得額を確認できるよう、収入・経費の記録を残しましょう。売上、経費、未入金、口座・カード明細、請求書、領収書を定期的に整理し、申告直前にまとめて確認する状態を避けましょう。
帳簿作成の時間を減らしたい方は、WorkLifeSupportのサービス内容と料金をご確認ください。
本記事は2026年8月時点の一般的な情報をもとに作成しており、個別の税務判断や申告結果を保証するものではありません。具体的な所得区分、保存義務、申告要否は、最新の国税庁・自治体の案内をご確認のうえ、所轄税務署または税理士へご相談ください。