白色申告と青色申告の大きな違いは、事前申請の有無と、青色申告だけに認められる特典です。一方、白色申告なら帳簿を作らなくてよい、というわけではありません。個人事業主やフリーランスが事業所得を得ている場合は、原則としてどちらを選んでも日々の記帳と帳簿書類の保存が必要です。
青色申告では、要件を満たすと青色申告特別控除、純損失の繰越し、青色事業専従者給与などを利用できる場合があります。ただし、申請期限や記帳方法などの条件があり、控除額がそのまま税金から差し引かれるわけでもありません。
この記事では、国税庁の案内をもとに、白色申告と青色申告の違い、2026年分までの控除要件、2027年分からの変更、どちらを検討しやすいかを個人事業主・フリーランス向けに整理します。
結論|継続して事業を行うなら青色申告を早めに検討
継続して事業所得を得る予定があり、期限内に申請し、必要な帳簿を整えられる場合は、青色申告を検討する余地があります。白色申告にも記帳義務があるため、「帳簿を作らなくて済むから白色」という選び方は現在の制度と合いません。
ただし、青色申告を選べるのは、不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき業務を行う方です。「フリーランス」「副業」という呼び方だけでは、収入が事業所得か業務に係る雑所得かは決まりません。所得区分に迷う場合は、事実関係を整理して税務署または税理士へ確認してください。
| 比較項目 | 白色申告 | 青色申告 |
|---|---|---|
| 事前申請 | 青色申告の承認を受けていない場合は白色申告 | 原則として期限までに青色申告承認申請書を提出 |
| 記帳 | 必要。簡易な方法による記帳も認められる | 必要。最大の特別控除には原則として複式簿記などが必要 |
| 特別控除 | 青色申告特別控除はない | 要件により最高10万円・55万円・65万円(2026年分まで) |
| 赤字 | 通常の事業赤字は青色申告と同じ方法では繰り越せない | 一定の純損失を原則3年間繰り越せる場合がある |
| 家族への給与等 | 要件を満たすと事業専従者控除 | 届出などの要件を満たすと青色事業専従者給与を必要経費にできる場合がある |
| 主な提出書類 | 確定申告書、収支内訳書など | 確定申告書、青色申告決算書など |
表は一般的な事業所得を前提とした概要です。不動産所得の事業的規模、所得金額、申告時期などによって適用関係が変わることがあります。
白色申告とは
所得税の青色申告の承認を受けていない方が行う申告を、一般に白色申告と呼びます。白色申告を始めるための承認申請はありません。
白色申告でも、事業所得、不動産所得または山林所得を生ずべき業務を行う方は、所得税の申告が必要ない場合を含め、収入や必要経費を記帳し、帳簿や書類を保存する必要があります。詳しくは国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」をご確認ください。
記録する主な内容は、取引年月日、売上先や仕入先などの相手方、金額、売上・仕入れ・経費の内容です。日々の合計額をまとめて記載するなど、一定の簡易な方法も案内されています。
青色申告とは
青色申告は、一定水準の記帳を行い、その帳簿に基づいて正しい申告をする方が、所得計算上の特典を受けられる制度です。利用するには、原則として事前に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
青色申告を選べるのは、不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき業務を行う方です。フリーランスの収入が業務に係る雑所得と扱われる場合、その雑所得について青色申告特別控除を適用することはできません。所得区分は活動の実態などを踏まえて確認する必要があります。
白色申告でも帳簿作成と保存が必要
白色申告と青色申告の比較で最も誤解されやすいのが、記帳義務です。白色申告者にも記帳と帳簿書類の保存が必要であり、領収書を集めて確定申告時に合計するだけでは、年間の取引を十分に確認できない可能性があります。
| 保存するもの | 保存期間 |
|---|---|
| 収入金額や必要経費を記載した法定帳簿 | 7年 |
| 業務に関して作成した任意帳簿 | 5年 |
| 棚卸表、請求書、納品書、領収書など | 5年 |
電子メールやクラウドサービスなどで受け取った請求書・領収書は、電子取引データとして一定の要件に従った保存が必要です。また、消費税の仕入税額控除やインボイス制度に関する書類には、所得税とは別の保存要件が関係する場合があります。
青色申告では、仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿と、貸借対照表・損益計算書・棚卸表などの決算関係書類を7年間保存します。領収書や預金通帳などの現金預金取引等関係書類も原則7年間ですが、前々年分の事業所得・不動産所得の金額が300万円以下の場合は5年間です。請求書、見積書、契約書、納品書などのその他の書類は5年間です。
フリーランスや副業の記帳範囲は「フリーランスや副業でも帳簿作成は必要?」でも詳しく解説しています。
青色申告の主なメリット
青色申告特別控除を受けられる場合がある
事業所得などから一定額を差し引ける青色申告特別控除があります。2026年分までの制度では、記帳方法や提出方法などの要件に応じ、最高10万円、55万円または65万円です。
「65万円控除」は税額が65万円減る制度ではありません。事業所得などの金額から控除する仕組みであり、実際の税負担への影響は、所得額、他の所得控除、適用税率などにより異なります。また、控除前の所得金額が上限となるため、常に満額を差し引けるとは限りません。
一定の純損失を繰り越せる場合がある
青色申告者に純損失が生じた場合、一定の要件のもとで、その損失額を翌年以後3年間にわたって各年分の所得から差し引けることがあります。前年も青色申告をしている場合は、繰越しに代えて前年分へ繰り戻し、所得税の還付を請求できる場合もあります。
赤字の全額が必ず繰越対象になるわけではなく、損益通算や申告期限などの条件も関係します。赤字が出た年も、申告の要否を早めに確認してください。
家族への給与を必要経費にできる場合がある
青色申告者と生計を一にする配偶者や15歳以上の親族が、その事業に専ら従事している場合、届出書に記載した範囲内で、労務の対価として適正な給与を必要経費にできることがあります。届出期限や勤務実態などの要件があります。
白色申告では、家族へ支払った給与を同じ仕組みで必要経費にすることはできません。ただし、要件を満たす事業専従者について、配偶者は最高86万円、その他の親族は1人につき最高50万円の事業専従者控除があります。実際の控除額は、これらの金額と「事業専従者控除前の事業所得等の金額 ÷(専従者数+1)」のいずれか低い金額です。
青色事業専従者として給与の支払いを受ける人や、白色申告の事業専従者となる人は、同一生計配偶者や扶養親族にはできません。家族全体への影響も含め、適用前に要件を確認してください。
2026年分までの青色申告特別控除
| 最高控除額 | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円控除の要件に加え、確定申告書と青色申告決算書を期限内にe-Taxで送信する、または一定の優良な電子帳簿を保存する |
| 55万円 | 原則として複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内申告 |
| 10万円 | 55万円・65万円の要件を満たさない青色申告者など |
上表は事業所得を得ている方を中心にした概要です。不動産所得では、事業的規模かどうかによって55万円・65万円控除の適用関係が異なります。詳しい要件は国税庁「No.2070 青色申告制度」をご確認ください。
2027年分から控除額と要件が変わる
2027年分以後の所得税では、青色申告特別控除が見直されます。これは2027年1月から12月までの所得に関する制度で、通常は2028年に行う確定申告から関係します。国税庁の案内では、正規の簿記の原則(一般には複式簿記)により記帳し、確定申告書、貸借対照表、損益計算書等を期限内にe-Taxで送信する場合は、最高65万円控除となります。さらに、一定の優良な電子帳簿保存またはデジタルシームレス保存の要件を満たし、確定申告期限までに必要な届出を行う場合は、最高75万円控除となります。
2027年分以後は、複式簿記で記帳していても、確定申告書と青色申告決算書を期限内にe-Taxで送信しない場合、書面申告での控除上限は原則10万円です。2026年分まで書面申告でも適用できた55万円控除はなくなります。
一方、簡易な簿記による10万円控除は、前々年分の事業所得に係る収入金額が1,000万円を超える方などが対象から外れます。不動産所得については事業的規模かどうかによる取扱いがあるため、条件を一律に当てはめないよう注意が必要です。
変更内容と準備方法は「2027年分から変わる青色申告特別控除」で詳しく整理しています。
青色申告の注意点
- 申請期限を過ぎると、原則としてその年分から青色申告を始められない
- 大きな特別控除には複式簿記、決算書の作成、期限内申告などが必要
- 青色申告の承認だけで自動的に65万円控除になるわけではない
- 帳簿と実際の口座・カード・請求書などを一致させる必要がある
- 家事と事業に共通する支出は、使用実態に基づく区分が必要
青色申告を選んでも、事業と関係のない支出が必要経費になるわけではありません。また、白色申告でも事業に直接必要な支出を一律に計上できないわけではありません。必要経費に当たるかは、申告の色ではなく支出内容や事業との関係などで確認します。
所得計算は、原則として入金日・支払日だけで決めるのではなく、収入や費用が帰属する時期に基づいて行います。ただし、その年の前々年分の事業所得と不動産所得の金額(事業専従者給与・控除を差し引く前)の合計額が300万円以下である青色申告者は、期限までの届出により現金主義の特例を選べる場合があります。この特例を利用すると、2026年分までの55万円・65万円控除および2027年分以後の65万円・75万円控除は利用できませんが、要件を満たせば最高10万円控除は利用できます。
個人事業主・フリーランスはどちらを検討する?
青色申告を検討しやすいケース
- 事業所得として継続的に申告する予定がある
- 会計ソフトなどを使い、年間を通して記帳できる
- 青色申告特別控除の要件を満たせる見込みがある
- 事業の赤字が生じる可能性や、家族が専従する状況がある
- 売上、経費、資産、借入金などを経営管理にも活用したい
白色申告になることがあるケース
- 青色申告承認申請書を期限までに提出していない
- 青色申告を取りやめた、または承認を取り消された
- その年分は白色申告とし、翌年分から青色申告へ移る準備をしている
副業収入が業務に係る雑所得と判断される場合は、白色か青色かを選ぶ場面とは異なります。収入額の大小や本人の希望だけで所得区分を決めず、活動実態や継続性などを確認してください。
青色申告承認申請書の提出期限
| 状況 | 原則的な期限 |
|---|---|
| すでに事業を行っている | 青色申告を始めたい年の3月15日まで |
| その年の1月1日から1月15日までに開業 | その年の3月15日まで |
| その年の1月16日以後に開業 | 開業日から2か月以内 |
提出期限が土曜日、日曜日、祝日等に当たる場合は、その翌日が期限です。相続により事業を承継した場合は、別の提出期限が定められています。手続は書面のほか、e-Taxでも行えます。すでに青色申告の承認を受け、取りやめや取消しがない方は、通常は毎年申請し直す必要はありません。
青色申告へ移るための準備
- 自分の所得区分と青色申告の対象になるかを確認する
- 青色申告承認申請書の提出期限を確認する
- 事業用の銀行口座・カードと私用取引をできるだけ分ける
- 会計ソフトや記帳方法を決める
- 期首残高、売掛金、買掛金、借入金、固定資産などを整理する
- 請求書・領収書・電子取引データの保存方法を決める
- 確定申告期限から逆算し、毎月または毎週記帳する
複式簿記は、取引を複数の面から記録し、貸借対照表と損益計算書につなげる方法です。会計ソフトを使う場合も、口座残高、売掛金、カード未払金などが実際の資料と一致しているかを定期的に確認します。
資料の準備は「記帳代行に必要な資料一覧」、記帳を外部へ依頼する場合の範囲は「個人事業主の記帳代行とは」をご覧ください。
白色・青色と消費税・インボイスは別の制度
所得税の白色申告・青色申告と、消費税の課税事業者・免税事業者、インボイス発行事業者の登録は別の制度です。青色申告にしただけで消費税の課税事業者になるわけではなく、白色申告だから消費税が免除されるわけでもありません。
消費税の納税義務は、基準期間や特定期間の課税売上高、インボイス発行事業者の登録など、別の条件で確認します。所得税の申告方法だけで判断しないでください。なお、インボイス発行事業者として登録を受けている課税期間は、基準期間の課税売上高にかかわらず課税事業者となり、消費税の申告が必要です。
また、2027年分からの青色申告10万円控除の制限で使う「前々年分の事業所得に係る収入金額1,000万円」と、消費税の課税事業者判定で使う「前々年の課税売上高1,000万円」は、判定対象が異なります。同じ基準として扱わないよう注意が必要です。
白色申告と青色申告のFAQ
売上が少なくても青色申告にできますか?
売上が少ないという理由だけで青色申告を利用できないわけではありません。ただし、不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき業務を行うことや、青色申告承認申請書を期限までに提出することなどが必要です。副業収入が雑所得に当たる場合は扱いが異なります。
青色申告は必ず複式簿記ですか?
青色申告者でも、簡易な帳簿による記帳で最高10万円控除の対象となる場合があります。ただし、2026年分までの55万円・65万円控除や、2027年分以後の65万円・75万円控除には、それぞれ複式簿記や提出方法などの要件があります。
白色申告なら領収書を保存しなくてもよいですか?
いいえ。白色申告でも帳簿や請求書、領収書などを一定期間保存する必要があります。電子データで受け取った書類は、電子取引データの保存要件も確認してください。
申請を忘れたら今年は青色申告にできませんか?
原則として、青色申告承認申請書を期限までに提出していない場合、その年分から青色申告を始めることはできません。その年分は適切な方法で申告し、翌年分から青色申告を利用できるよう期限を確認して申請します。個別事情がある場合は税務署へ確認してください。
開業届を出せば自動的に青色申告になりますか?
いいえ。個人事業の開業・廃業等届出書と、所得税の青色申告承認申請書は別の手続です。青色申告を希望する場合は、対象となる所得と提出期限を確認し、青色申告承認申請書を提出します。
青色申告にすれば必ず節税になりますか?
必ずとはいえません。所得金額が少なく控除を使い切れない場合や、要件を満たせない場合もあります。記帳や申告にかかる時間・費用も含めて検討します。個別の税額比較が必要な場合は税理士へ相談してください。
主な参考資料
- 国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
- 国税庁「No.2070 青色申告制度」
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
- 国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
- 国税庁「開業する場合」
- 国税庁「現金主義による所得計算の特例を受けるための手続」
- 国税庁「優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存により75万円の青色申告特別控除を適用しましょう!」
- 国税庁「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ」
- 国税庁「No.6101 消費税の基本的なしくみ」
- 国税庁「消費税及び地方消費税の申告等(Q22)」
まとめ|申請期限と記帳方法から逆算して選ぶ
白色申告と青色申告のどちらでも、個人事業主・フリーランスが事業所得を得る場合は、原則として記帳と帳簿書類の保存が必要です。青色申告には特別控除や純損失の繰越しなどの制度がありますが、期限内の申請と、利用する特典に応じた記帳・申告が必要です。
まずは、自分の収入が青色申告の対象となる所得か、申請期限に間に合うか、どの控除要件を目指すかを確認しましょう。記帳をため込んでいる場合は「領収書を1年分ためたときの整理手順」、専門家へ相談する時期に迷う場合は「個人事業主に税理士は必要?」も参考にしてください。
本記事は2026年8月時点で確認した国税庁資料に基づく一般的な情報です。所得区分、青色申告の承認、控除の適用、税額などを個別に判断・保証するものではありません。具体的な取扱いは所轄税務署または税理士へご確認ください。